Icom ID-1 Report

アイコム デジタルトランシーバ ID−1使用レポート

第7回:デジタルデータモードを使ってみよう


ご家庭で良く利用される「無線LAN」は家庭内の複数のパソコン を接続するLAN*です.一方, D-STARは全国的なネットワークを接続するネットワークで,いわば 「無線WAN**」になります.(勝手に名付けてしましました!)
一度接続できてしまえば,インターネットと同じようにいろいろな 使い方ができます.
*LAN=Local Area Network(ローカルエリアネットワーク)
**WAN=Wide Area Network(ワイドエリアネットワーク)

それでは,DDモードを使って,無線WANに接続してみましょう.

パソコンに設定するIPアドレス

D-STARでデジタル無線通信を行う場合でも,通常インターネットを 使うためにネットワークの設定(TCP/IP)の設定をするのと同様に IPアドレスを設定する必要があります.

ただし,個々のパソコンに割り振られるIPアドレスはプロバイダや ブロードバンドルータからDHCPを使って自動的に配布・設定される のではなく,自分でパソコンに設定しなければなりません.

特に,不特定多数が使うデジタルレピータをDDモードで使う時には JARLから各局に付与されたIPアドレスを使います.通常8個のIPア ドレスが付与されます.つまり,8台までPCを接続できるわけです.
以下にDDモードでデジタルレピータにアクセスして使う方法につい て説明します.

パソコンのの設定

いま,次の表のようにIPアドレスが指定されたと仮定して TCP/IPのIPアドレスの設定方法について説明します.

IPアドレスの設定
設定項目説明設定内容
IPアドレスJARLから付与されたIPアドレスを使用します10.0.150.33(例)
サブネットマスクD-STARでは255.0.0.0です255.0.0.0
デフォルトゲートウェイ各ゾーンのゲート ウェイ局のIPアドレスを指定します10.0.150.7(例)
DNSサーバ各ゾーンのゲートウェイ局のIPアド レスを指定します10.0.150.7(例)

「ゾーン」というのは,D-STARのレピータ,アシスト局等のインター ネット中継を使わずに中継交信できるエリアのことです.最大4局 と決められています.
ゾーン間で交信をする場合には,各ゾーンに必ず1つあるゲートウェ イ局の間をインターネットで中継します.

それでは,実際にWindowsXPパソコンのIPアドレスを設定してみましょ う.

  1. 「スタート」メニューから「マイネットワーク」をクリックし ます.表示されるウィンドウから,「ネットワーク接続を表示する」 をクリックします.
  2. 表示されるネットワーク接続から「ローカルエリア接続」をダ ブルクリックします.
  3. 表示される「ローカルエリア接続の状態」ウィンドウの「プ ロパティ」ボタンをクリックします.
  4. 表示される「ローカルエリア接続のプロパティ」ウィンドウの 中から「インターネットプロトコル(TCP/IP)」と書かれた項目を クリックし,「プロパティ」ボタンをクリックします.
  5. 表示される「インターネットプロトコル(TCP/IP)のプロパティ」 ウィンドウに次のように入力します.
これで,IPアドレスの設定が終了しました.

次にファイルを共有するための設定を行います.

  1. 次にデスクトップまたは「スタート」メニューから, 「マイコンピュータ」アイコンを右クリックして,「プロパティ」 をクリックします.
  2. 「コンピュータ名」タブをクリックして,「変更」ボタンをク リックします.
  3. 「コンピュータ名」と「ワークグループ」を適切なものに設定 します.
  4. 共有したいフォルダを右クリックして「共有とセキュリティ」 を選択します.すると次のような共有設定ウィンドウが開きます.
    共有に必要な設定を行います.
以上でパソコンの設定は終了です.

ID-1の設定

ID-1にはIPアドレスは設定する項目はありません.つまり,ID-1は 単なる無線と有線の変換装置で,設定するコールサインによって接 続先を指定できる単なるスタティックルータに相当します.

そこで,ゲートウェイ局のコールサインで中継先を指定し ます.また,接続したい相手局はIPアドレスではなくコールサイン で指定します.

つまり,ID-1に設定するコールサインは,次のように設定します.

ID-1に設定するコールサイン
設定項目説明設定内容
UR相手局のコールサインを入力します相手局のコールサイン
RPT1自局がアクセスするエリアのレピータ のコールサインです東海ゾーンでは, 「JP2YGE」,「JP2YGG」,「JP2YGK」のいずれか
RPT2ゲートウェイになるゾーンレピータのコールサイン+Gを 設定します東海ゾーンでは「JP2YGE G」
MY自局のコールサインを設定します 自局のコールサイン

ネットワークコンピュータから相手局が見える

上記のようにパソコンとID-1の設定が終ったら,この時点で相手局 のID-1に接続されたパソコンが見えるはずです.

なんとファイル共有ができる!

もちろん,誰でもアクセスできるようにファイル共有の許可を出し ておけば,インターネットで行っているのと全く同じようにファイ ルの読み書きができます.

いゃ,いろいろなプロトコルも通る!

ファイル共有だけでなく,電子メール,ホームページ,その他のプ ロトコルもインターネットと全く同じように動きます.

今後いろいろなサーバが増えると楽しくなりますね.

そして,インターネットにもアクセスできる

D-STARにはゲートウェイ局という概念があります. ゲートウェイ局は各ゾーンに1局だけ存在し,インターネットと常 時接続している局です.この局を介して他のゾーンのゲートウェイ 局との間で中継を行います.
このゲートウェイ局を使うとインターネットにもアクセスできます. ゲートウェイ局を利用してインターネットに接続するには,次のよ うに設定します.
  1. 周波数をデジタルレピータに合わせ,DDモードに設定します.
  2. 「RP」ボタンをクリックして,レピータシフトを行うようにし ます.DDモードの時は「RPS」に設定します.
  3. 「CS」ボタンをクリックして,コールサイン選択ウィンドウを 開きます. 直接ゲートウェイ局にアクセスできる時は,「RPT1」にその局のコー ルサインを入力し,「G」ボタンを押します.「RPT1」のコールサイ ンの最後に「G」という文字が追加されます.「OK」ボタンを押して 確定します.

    もしゲートウェイ局に直接アクセスできない時は,「RPT1」にアク セス可能なデジタルレピータ局のコールサインを入力し,「RPT2」 にゲートウェイ局のコールサインを入力します.「G」ボタンをクリッ クすると,「RPT2」のコールサインの最後に「G」という文字が追加 されます.「OK」ボタンを押して確定します.

  4. 「相手局」に交信する相手局のコールサインを入力して「OK」 ボタンをクリックして確定します.

    このようにして,ゲートウェイ局とアクセスできれば,インターネッ トにもアクセスできるようになると思います.きっと.


訂正!:「きっと」と書いてありますが,実験の結果残念ながら動 きませんでした.
上記で相手局の欄が「CQCQCQ」になっているところを交信したい相 手局のコールサインに設定してください.
もしインターネットに接続する場合には,ゲートウェイと同じコー ルサインに設定します.上記の例では例えば「JP2YGE」とします. コールサインのうしろに「G」や「A」を付けてはいけません. これでインターネットにアクセスできます._o_

注意:


戻る:「第6回:DVモードでゾーン外と交信してみよう」へ
進む:「コラム2:ID-1の中身は?」
進む:「第8回:移動運用をしてみよう」へ
目次に戻る
2004.03.23.(初版作成)
2004.05.02.(最終更新)
fmiso@sccs.chukyo-u.ac.jp